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2011年7月10日 (日)

タンホイザー

自分の医者を相続人に任命する奴は馬鹿である。
金儲けの秘訣 ・第93条)


通勤の途中、愛車のハードディスクから流れてきた音楽は、
ワーグナーワルキューレの騎行だった。
おそらくは、ムラビンスキー指揮のレニングラードフィル、
の演奏かな、と思うけれど、
読込みの際に文字情報を入れるのが億劫でしてないゆえに、
実際には演奏者はわからない。
同時にワルター指揮コロンビア交響楽団と
カラヤン指揮ベルリンフィルの序曲集も読込んだので、
そのどちらか、の可能性もなくはない。

運転しながらワーグナーを聴いていて、いろんなことを考える。
運転中が物思いに耽る時間であることは以前にも書いたとおりだ。

まず考えたのは、白い巨塔、のことだ。
ここんところ、昔の作品にもかかわらず、
山崎豊子さんの小説がドラマ化されたり、映画になったりして、
ちょっとした流行、とでもいえる現状が続いているが、
その端緒になったのが、唐沢寿明が財前教授を演じた、
ドラマ版の白い巨塔、だったように思う。
この作品の中で、唐沢財前が、手術のイメージトレーニングを
するときに、流されていたのが、
ワーグナーのタンホンザー、だった。

なんで、ワーグナー?

と当初思っていたのだが、原作ではまだ東西冷戦の真っ最中で、
そんななかドイツの学会に招聘された財前教授が、
東独の高名な医者を尋ねるシーンがあった。
ベルリンの壁が東西ドイツの間に立ちはだかっていた時代の話だ。

ドラマでは時代的にそのまま描写しても意味がない、ので、
アウシュビッツの収容所跡を訪ねる内容に差し替わっていた。
アウシュビッツの収容所跡、にテレビカメラが入る許可が
なかなかおりないところ、今回は特別に、
というのもドラマの売り文句だったように記憶しているが、
それ故に、人命よりは、自分の栄達をより重視する医者
だった感のあるかれのテーマが、ワーグナー、
になったということなのだろう。

多くの日本人には、あんまりぴんと来ないかもしれないが、
ワーグナーは、ナチスドイツの指導者だったヒットラーが
愛した作曲家であり、ユダヤ人にとっては、第2次大戦後、
忌まわしい記憶とともに、語られる音楽になってしまったわけだ。

ヒトラーが愛したからといって、
ワグナーにどんな罪があるというのか?

さだかな記憶ではないが、たしか、松本零二氏のマンガに
そんなセリフがあったように思う。
ひょっとすると、別の人の作品だったやもしれない。

それはともかく、財前教授のタンホイザーは、
アウシュビッツでのロケが初めにあって、
その伏線として使用されていた、
という風に考えるのが自然なんだろう。

次に考えたのが、村上春樹氏による、パン屋襲撃、
という小説のことだ。
これはざっとあらすじを書けば、腹を空かせた2名の若者が
パン強奪を目的にパン屋に強盗に入ったが、
パン屋のおやじの提案で、クラシック音楽を聴く代わりに、
パンをもらう話
、ということになる。

こんな風に書けば、味もそっけもないが、
ここでパン屋のおやじが強盗である若者たちに聴かせた音楽、
というのが、たしかワーグナー、だった。

舞台は、東京だった、と思うけれど、パン屋と若者たちが
どこの国の人、という記述はなかったから、
パン屋のおやじがドイツ人で、
腹を空かせた若者がユダヤ人、と仮に決めれば、
この小説は、ずいぶんポリティカルな話に読めてしまう。

ちなみに、パン屋再襲撃では、
襲われるのは、マクドナルドだったし。
これはこれで、別のポリティカルな話になるなー、
と思いつつ、今日の一日が始まるのだった。


▼ちなみに、ピアニストでもある、指揮者の
ダニエル・バレンボイム氏が、イスラエルでワーグナーを
演奏して話題になったのは割と最近でなかったか、と思い、
ダニエル・バレンボイム イスラエル ワーグナー
で検索をかけてみると、
2001年の出来事であることがわかった。
便利な世の中になったもんだ。
これも、バレンボイム氏がユダヤ系だからこそ可能、
だったのだろうけれど、記憶とは違って、
必ずしもすべてのイスラエル人民に
歓迎されたわけではなかったようだ。
しかしながら、誰かが愛したから、という理由で、
直接関係のない音楽が聴けない、というのも、
不自由で不幸な話だな。
それだけ、ユダヤ人民が深く傷つけられた、
ともいえるだろうけれど。

▼写真は、ダニエル・バレンボイム氏指揮、
ベルリンフィルによる、ブルックナーの交響曲集。

Photo

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