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2008年12月 7日 (日)

バッハ on piano

ステーキではなく、ジュージュー焼ける音を売れ。
金儲けの秘訣 ・第146条)



真夜中、枕元のiPodから流れてくる、
グレン・グールドのバッハ演奏を聴いていると、
ぼくはとても不思議な気分に襲われる。

この作曲家が、鍵盤のためのこれらの音楽を作ったとき、
まだこの世には、現代のピアノと同じ音色を奏でる楽器は、
存在していなかった。

にもかかわらず、グールドによって紡ぎ出された音楽、
たとえば、平均律クラヴィーア曲集第1巻を聴いていると、
バッハは、この楽器のためにこの音楽を作ったのではない、
ということがどうにも信じられない、そんな気がしてくるのんだ。

もうずいぶんと昔のことになるけれど、
そもそもぼくが、ピアノで弾かれたバッハを聴きはじめたのは、
ドイツグラモフォンの、マルタ・アルゲリッチによる、
3曲入りのレコードを聴いてからだ。

当時週に一回、クラシックの新譜を紹介してくれる、
民放のFM番組をぼくは愛聴していて、
そこで紹介された曲をエアチェックした、
カセットテープで音楽をよく聴いていた。
よほど気に入ったものは、レコードを購入した。

アルゲリッチさんのバッハは、
そのよほどのなかのひとつ、だった。
そのレコードはほかのいくつかのレコード同様、
繰り返し聴いたものだ。
そして、今はCDで買い直したものをiPodで聴いている。

この演奏は、とてもすばらしかった。
バロック時代の音楽であるのにもかかわらず、とても情熱的で、
なおまた、宿命的なロマンティシズムを感じさせるような、
そんな演奏だった。
ぼくは、このレコードを聴いて、バッハにも、
マルタ・アルゲリッチさんにも、恋してしまった
ほどだ。

ぼくは、演奏会場に足を運ぶのが、
今も昔もあまり好きではないけれど、
かのじょが日本にやってきて、
このレコードのなかの1曲を演奏すると聞いたときは、
仕事を休んで、わざわざ聴きにいったりもした。

そしてこのレコードに関して、
ぼくはもうひとつ特別なインプレッションを受けた。
それは、黒田恭一という評論家によって書かれた、
レコードの解説、いわゆる、ライナーノーツによってだ。

かれはこういう。

リパッティが1950年当時、
ピアノでバッハをひいたときよりも、
(今の演奏者が)ピアノでバッハをひくことが
むつかしくなっていることを(われわれは)思い出すべきだ。
なぜ、いま、敢てピアノでバッハなのかを、
(ピアニストは)その演奏であきらかにしなければならない。
ききては、まず、それを、ききたがっている。
・・・

本当のところ当時のぼくはただ、漫然と耳に心地いい音楽を
聴きたかっただけだったのだけれど、
演奏家はそんな風な責任を背負わされて、
ピアノを弾いたりしていたわけなんだあ、
と、妙に感心したのを覚えていているし、
またたしかにそんな意味合いで、
芸術や、いろいろな事象に接することもまた、
意義深いことかもしれない、と、
若かったぼくは、思ったものだ。

このレコードが出た当時、たしかに亡くなった、
グレン・グールド以外、ピアノでバッハを弾くひとは
あまりいなかった。
そしてグールドは、あまりに特別で、また特殊であったために、
一種治外法権的に、独自に存在していたのんだ。

このレコードが出たときよりも、最近は、
ピアノによるバッハの演奏、を収めたCDが多く出ている。
マルタ・アルゲリッチさんの、この演奏がエポックを切り開いた、
というのは、贔屓目に過ぎるだろうか。

もちろん、グールドの早すぎる死が、ある意味、
ピアニストたちにかけられていた、呪いを解いた
ということも否定はしない、のだけれど、さ。

ただ、たとえどんな楽器で演奏されようとも、
偉大な音楽はやはり偉大
なのだ。

ピアノによるバッハを聴いて、心底そう思うのであることだよ。


▼いまや年齢的には、おばあさん、の領域に近づきつつある、
マルタ・アルゲリッチさんだけれども、
若いときはけっこうもてもてで、
3人の子持ちながら、それぞれ父親が違う、
という離れ業をやってのけた、らしい。
アルゲリッチさんの偉業に合掌(-人-)

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そんなかのじょの自社のソロを、
ドイツグラモフォンがが最近纏めて売り出した。
そのキャリアの偉大さ、にもかかわらず、
たったの8枚組みでしかない。
それも驚き、なのだけれど、もっと驚愕したのんは、
アマゾンでの3000円ちょいという、その値段だ。
1枚の値段ぢゃんかよー、とかいいつつ、
やはり買ってるおっさんがいるんである^^;

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