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2006年8月 6日 (日)

北極熊の話~村上春樹「神の子どもたちはみな踊る」の『タイランド』より

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「彼は私に一度、北極熊の話をしてくれました。
北極熊がどれくらい孤独な生き物であるかという話です。
彼らは年に一度だけ交尾をします。
年に一度だけです。
夫婦というような関係は、彼らの世界には存在しません。
凍てついた大地の上で一匹の牡の北極熊と一匹の牝の北極熊とが
偶発的に出会い、そこで交尾が行なわれます。
それほど長い交尾ではありません。
行為が終了すると、牡は何かを恐れるみたいに
さっと牝の身体から飛び退き、交尾の現場から走って逃げます。
文字どおり一目散に、後ろも振り返らずに逃げ去ります。
そしてあとの一年間を深い孤独のうちに生きるのです。
相互コミュニケーションというようなものは
いっさい存在しません。
心のふれあいもありません。
それが北極熊の話です。
(村上春樹「神の子どもたちはみな踊る」の『タイランド』より)

ほんとうに北極熊が孤独なのか、ぼくは知らない。
動物園で見るかれらは、けっこうワキアイアイとして、
集団生活を楽しんでいるように見えたし、
しかも、北極熊に孤独、という概念があるのかどうか、
わからないし。

まあ、それはともかくとして、この1年、ぼくは北極熊並に
孤独だった、と思う。
もちろん、北極熊に孤独、という概念があればの話だけど。

でも、最近、この孤独というやつとうまく共存できるように
なってきた、と自分では思う。
ぼくは、そういえば、ひとりが好きだったんだ。

だからといって、ぼくだって、根っからの北極熊
というわけではない。
人並みに人恋しいときだって、あろうというものだ。

しかし、そういう意思表明すると、
どういうわけだが反感を買う場合があるようだ。
ひとつには、そんな風に思うのなら、それなりの努力をすべき
だろうと、考えるひとがいるためだろう。
たしかに、そのとおり。
そのためのなんの努力もしないぼくにそんなことを言う権利は
ないのだと思う。

ただ、反論の権利があるのであれば、であるが、
こういう事情もある。
自分にぴったりした相手は、この歳になるとそうそういない。
あるいは、いたとしても、相手がひとりではない。
あるいは、いろんなところでミスマッチがあって、
およそぴったりした相手とはいえない、
という確率が高いので、努力するだけでも大きなコストがかかる。
ていうようなことは、そういう反感をもつひとたちは
あまり考えないようだ。

若いときのミスマッチは、時間が修正してくれるような気がする。
あるいは、ミスマッチをミスマッチと感じる経験や知識もない
場合だってあるだろう。
また、失敗したとしても、今のこの時代、リトライだって
できよう、というものだ。

しかし、である。
そろそろ残り時間を気にする歳になったぼくには、
主義主張や生きてきた環境のかけ離れた相手と、
長い時間かけて調整していこうと思えない。
そんな気力はとうにない。
いつだかは知らないが、タイムアウトは迫っているのだ。

こんなぼくは、淋しい、などといってはいけないんだろう。
北極熊がだまっているように。

そういえば、昔、男は黙ってサッポロビール、
なんて今では発禁モノの名コピーがあったなあ。
オトコハダマッテ、、、かあ。


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コメント

師匠、まいど^^

気が合うと思ってる人でも、毎日一緒だとウザくなるんですよね~
だったら、たま~に知人と会って喜んで、あとは1人生活・・・ってほうが楽しい気がする。
うちの姉見てたらそう思う。
でもそれは、私が1人じゃないからそう思うだけかな。

ところで、もうお出掛けされてるんですか~?

マナオさん、まいど^^

今、タイペイにいるんどすえ。
ちょうどメール見てたので、このレスポンスの良さ。
いっしょにいたって、こうはいかないくらいっすよねー^^

那覇・台北と渡ってきましたが、大阪が一番暑かった、っす(大獏)

異国の同志、こんにちは♪
村上春樹の小説に出てくる男性の多くは配偶者を持ちながらもみんな孤独でしたよねぇ・・・だれかと番うことが必ずしも孤独でないとは思えないんですよ。私はむしろ誰かと番うことで人は独りなんだなと思い知ったくらいです。まあそれだけに楽しいし面白みもあるんですけどね。後悔はしとりません。
でも同志、私はいつまでもぷんぷいさんの同志です・・・。
さ、ネオタイで異国の土産話聞かせてくださいませね!

同志、まいど^^

>だれかと番うことが必ずしも孤独でないとは思えないんですよ。
>私はむしろ誰かと番うことで人は独りなんだなと
>思い知ったくらいです。
誰ともつがったことないんで、予想もつかなかった、
深い意見に面食らっております。
でも、そういうものかもしれません。
こればっかりは、あっしにはわかりかねますね~^^;

>まあそれだけに楽しいし面白みもあるんですけどね。
>後悔はしとりません。
これがいえるのも同志ならでわ、と敬服しきりでごんす^^

>でも同志、私はいつまでもぷんぷいさんの同志です・・・。
>さ、ネオタイで異国の土産話聞かせてくださいませね!
ありがとうございます。
あっしは大事なひとができたら、同志のこと忘れるかも。。。
↑うそですよ~^^;

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